02-03200 一乘山家原寺

一乘山いちじようさん家原寺ゑばらじ


家原寺ゑばらじ

家原ゑはら村にあり
開基 行基ぎやうぎ菩薩
中興 興正こうしやう菩薩

本尊文殊もんじゆ

左 釋迦 右 普賢 共に行基の作也
本尊の毫中がうちうに壱寸八分の黄金わうごん佛を安す
天竺波羅門ばらもん尊者そんしや天平十八年南都なんと東大寺とうだいじ建立の時来朝らいてう將來しやうらい霊佛れいぶつなり

多寚塔たほうたう

大日如来を安置す
香燈木院かうとうもくゐんと称す

不動堂ふどうだう

本堂の右にあり

祖師堂そしだう

本堂の北にあり
中央 行基ぎやうぎ菩薩 左 弘法大師 右 興聖こうしやう菩薩

藥師堂やくしだう

本堂の巽にあり

清凉院しやうりやうゐん

本堂のうしろにあり
行基戒壇の地なり

鎭守社ちんじゆのやしろ

金峯きんぷ 熊野くまの 白山はくさん 八幡はちまん 丹生にふ 髙野たかの等の神社を祭る

誕生木たんじやうもく

行基出生の時胞衣ゑな此木このきかけし也

龍穴りうけつ

西門の南にあり

經塚きやうづか

本堂の南にあり

閼伽井あかい

塔の下壇にあり

放生ほうじやう

西門の内にあり
此池に片目かためうをあり

樓門趾ろうもんのあと

本堂の前
下段にあり

弁財天へさいてんの社 聖天尊しやうでんそんの

ともに池中にあり

善光寺塚ぜんくはうじづか

池中にあり
ある人善光寺如來の霊告れいこうを得て生極楽しやうごくらくゐんさづかり此池中に安置し善光寺塚といふ

わうもん

金剛力士こんがうりきしを安す

三反田さんたんた

門前にあり行基田畔てんはん㽗割せわりおしへ給ふ所也

それ家原寺ゑばらじと申は大僧正行基ぎやうぎ出誕しゆつたん家地いゑところにして後あらためて精舎しやうしやとなす
行基ぎやうぎ天智帝てんちてい七年にうまれ給ひ父は髙志氏たかしうぢ名は貞知さだとも幼名ようめう法喜丸はうきまると号す百濟王はくさいわうゑい王仁わうにんのち
はゝ蜂田首はちたのおふと虎身とらみむすめ藥師姫やくしひめといふ今の蜂田はちた華林寺けりんじは此藥師女の家地いゑところ
行基ぎやうぎみづからしていはく山海さんかい两邉りやうへん中間ちうげん一乘菩提峰いちじようぼだいほうといふあり慈尊じそん成道じやうだう勝地しやうちにして霊山りやうぜん會塲ゑじやうことならず
西北せいほく蒼海さうかい浪上らうしやう洋々よう〱としてはるかにこゝろを億國おくこくねん観法くはんほう九品くほんすましむ
其山そのやまかたち獅子しゝたり北面ほくめんしてかしらひだりめぐらして南顧なんこ
いけ穿うがつくちとしはしすなはちしたひたひをかさきみゝみちまなこしはやまぶたみぎりくさひげかづら其狀そのかたち宛然ゑんぜんたり
三國さんこくつちあつめだんきづき一たて釋迦しやか文殊もんじゆ普賢ふげんあん
かたはら禅室ぜんしつつくまへ髙門かうもんたてて二金剛こんがうおく
ひだり鐘樓しゆろうみぎ鼓樓ころう三層さんその塔中たうちうには四智佛しちぶつゑかいあん西にし藥師堂やくしだうつくひがし鎭守ちんじゆかみまつ
うしとら食堂じきだうひつじさる開基かいき平居へいきよ禅室ぜんしつ山上さんじやうには龍穴りうけつあり
赤龍渕しやくりようゑんといふ所には漢髙かんかうれいまつ
これは行基ぎやうぎ系脉けいみやく百濟王くたらわう遠祖ゑんそ
西門さいもんかたはら放生池ほうしやうちあり行基かつ帰路きろのときさと年少わかものうをとつ池邉ちへんゑん
たはむれになますを行基にすゝすなはちこれをくふて池にのぞ吐出はきいだし給へば小魚しやうぎよとなつて水上すいしやうあそ
片目魚かためのうをいまにあり里人さとびと奇異きゐの思ひをなす
つかうへゑのきあり初生しよしやうの時ゑなかくる所なりこれを今に誕生木たんじやうぼくといふ
方田ほうてん三段さんだんありこれ天下てんか田畔てんはん歩数ぼすうかんがみ法則ほうそく
山嶺さんれいを一乘菩薩峯じようぼだいほうといふかるがゆへ一乘山いちじようさんがうその本生ほんしやう家地かちなれば家原寺かげんじと呼ぶ
行基ぎやうぎしつ清凉院せいりやうゐんといひ神野かんやみなみさき神﨑院かうさきゐんとなづく
外門ぐはいもんにはすなはち行基誕生地たんじやうのちはう佛塔ぶつたう香燈木院かうとうもくゐんと号す
すべて此寺に名勝めいしやう十區じつくおよべ
天平てんぴやう丙子年波羅門ばらもん僧正そうじやうしん金の文殊もんじゆ本堂ほんだう文殊もんじゆ毫中がうちうをさ
同じく將來しやうらい五色ごしき佛舎利ぶつしやり寳藏ほうざうをさ法貴丸ほうきまる行基幼名産髪うぶかみ手游てあそび弁財天べさいてんとう毎歳まいさい六月廿三日虫拂むしはらひはいなさしむ

續日本紀曰
大僧正行基ぎやうぎ都鄙とひ周遊しうゆうして衆生しゆじやう教化けうかし四ほう要害ようがいところにははしつくつゝみきづかしむ
百姓ひやくせい今に至其利そのりかうむるもの多し
豊櫻彦とよさくらひこ天皇聖武帝はなはだ敬重けうちうし給ひてみことのりして大僧正だいそうじやうさづ
和尚をしやう霊異れいゐ神驗しんけんおほときひと行基ぎやうぎ菩薩ぼさつしやう
留止りうしところみな道塲だうじやうたつ畿内きないにはすべて四十九ゐん諸道しよだうにも亦多し
つひ天平てんへい勝寳しやうぼう元年二月丁酉遷化す歳八十

親長記曰
  文明十一年三月十四日晴家原寺に詣て文殊を拜し殘花を見てよめる
 山風のさそはぬさきにちらさりし身をうらみても花はちりけり 親長

今に見る一乘山家原寺


一乘山家原寺 南大門(仁王門)
阿吽の金剛力士像が門を守護しています


本堂
「知恵の文殊」として入試時期になるとより多くの方が参拝され、合格祈願の願いを書き本堂の周囲に張り付けています。


行基菩薩銅像


家原寺案内図

 飛鳥・奈良時代の名僧行基は、この地に生まれ数多く社会事業を推し進めた。僧侶としての民間布教を行うとともに、農業・土木・交通・医療等の福祉事業にも尽力し、生前から菩薩と呼ばれてした。
 行基は、生涯で49の寺院を建てた。家原寺は、慶雲元年(704)に自身の生家を寺として開いたもので、行基の活動の原点とされた。本尊の文殊の菩薩は、「知恵の文殊」として、一年を通して数多くの参拝者が特に多くの学生が合格祈願に訪れることが非常に有名である。
 行基が灌漑利水の施設を多く作り、農業生産の向上を指導したことなど、その出身と事業を描いた、家原寺所蔵の「行基菩薩行状絵伝」三幅は、国の重要文化財に指定されている。また、この境内は大阪府指定の文化財(史跡)となっている。
 毎年行われる1月14・15日(小正月)の大左義長法会は、「家原のとんどまつり」として知られ、多くの参拝者が昇運や無病息災を願って訪れる。

堺市


行基菩薩誕生塚碑


開山堂


塔頭中院から望む境内


中院に建てられた三重塔


家原寺石造板碑
「南無阿弥陀仏」と刻まれています。


家原寺石造板碑 案内板

家原寺

所在地   大阪府堺市西区家原寺町1丁8-20
位置    北緯34度32分14.9秒 東経135度28分28.8秒座標: 北緯34度32分14.9秒 東経135度28分28.8秒
山号    一乗山
院号    清涼院
宗旨    古義真言宗
宗派    行基宗
寺格    大本山
本尊    文殊菩薩
創建年   慶雲元年(704年)
開山    行基
開基    聖武天皇(勅願)
正式名   一乗山清涼院家原寺
別称    智恵の文殊さん
      ハンカチ寺
札所等   西国薬師四十九霊場第15番
      おおさか十三仏霊場第3番
      仏塔古寺十八尊第1番
      和泉八十八ヶ所霊場第1番
文化財   絹本著色行基菩薩行状絵伝3幅(重要文化財)
      石造板碑(府指定有形文化財)
      家原寺境内(府の史跡)

家原寺(えばらじ)は、大阪府堺市西区家原寺町にある行基宗の大本山の寺院。山号は一乗山。本尊は文殊菩薩。以前は高野山真言宗別格本山であった。地元では「智恵の文殊さん」として親しまれている。

歴史

寺伝によると慶雲元年(704年)、行基が生家を寺に改めたのに始まるとされる。

叡尊が寛元3年(1245年)に再興し、多くの塔頭を有したが、兵火などで衰退した。江戸時代には田安家が帰依して寺領の寄進がなされている。しかし、明治初年の廃仏毀釈で荒廃する。

1989年(平成元年)に三重塔が再建された。

2018年(平成30年)に高野山真言宗から独立し、行基宗を創設して本山となっている。

合格祈願の寺として、以前は祈願する際に本堂の壁に直接願い事を書き入れていた。そのために別名「落書き寺」と呼ばれていたが、現在は合格祈願をハンカチに書いて本堂の外壁に張り付ける形に変わったことから、別名「ハンカチ寺」と呼ばれている。

山門に安置されていた以前の仁王像は、明治時代の廃仏毀釈のなかで村人によってフランス人の美術商に売却されてしまった。現在はアメリカ合衆国首都ワシントンD.C.のフリーア美術館に収蔵されている。

境内

・本堂(文殊堂) – 慶安元年(1648年)再建。
・経堂
・宝物庫
・納骨堂
・開山堂
・行基菩薩誕生塚
・行基菩薩御影堂
・西弁財天堂
・鐘楼
・賓頭盧堂
・水かけ地蔵堂
・東弁財天堂
・薬師堂
・ヤマモモの木 – 堺市指定保護樹。
・三重塔 – 1989年(平成元年)再建。
・中院 – 本坊。
・蓮池
・北向地蔵堂
・翼舎
・不動堂
・南大門(仁王門) – 東大寺南大門のように仁王像が向かい合って立っている。

文化財

重要文化財

・絹本著色行基菩薩行状絵伝 3幅 – 奈良国立博物館寄託。

大阪府指定有形文化財

・石造板碑

大阪府指定史跡

・家原寺境内

前後の札所

西国薬師四十九霊場

14 野中寺 - 15 家原寺 - 16 四天王寺

おおさか十三仏霊場

2 正圓寺 - 3 家原寺 - 4 四天王寺

仏塔古寺十八尊霊場

1 家原寺 - 2 叡福寺

和泉八十八ヶ所霊場

1 家原寺 - 2 塩穴寺

交通

阪和線(JR西日本)津久野駅下車
南海バス「文珠前バス停」下車

【出典元:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』家原寺