04-08000 宝珠山光明寺理智院

宝珠山ほうしゆさん光明寺くはうみやうじ理智院りちゐん


理智院りちゐん
 秀𠮷公ひでよしこうのやしろ

谷川村にあり 眞言宗しんごんしう
天平年中聖武帝の本願にして開基かいき行基ぎようぎ菩薩ぼさつ

本尊ほんそん不動明王ふとうみやうわう

弘法大師の作 秀𠮷公ひでよしこう朝鮮てうせん征伐せいばつの時海路かいろ安穏あんをん祈誓きせいし給ふ 故に舟玉の本尊といふ
腹内ふくないに不動尊 みたけ壱尺壱寸の像を籠る
共に弘法大師の作也
𦚰壇に聖観音を安す 行基ぎやうぎの作也

秀𠮷公ひでよしこうのざう

本堂のおく社内に安置す
みたけ壱尺ばかり 面貌めんばう隆準りうしゆん龍顔りようがんにしてぼんならず 威風ゐふう凛々りん〱たる尊像そんざうなり
豊國山とよくにやま祠廟しべう神躰しんたいなりしを元禄年中火災くはさいの後當寺にうつ
すなはち當山も桒山くはやま法印が再興さいこうの地也
かたはら弁財天べさいてんを安す 又髙麗こまいぬ古物こぶつあり 上古しやうこさくと見へてはなはだ竒雅きがなり

流木ながれきの観世音くはんぜをん

近年きんねん天明てんめい五年五月十八日當所の海濵かいひんに流れよる物あり
たけ壱丈わたり弐尺伐木ばつぼく
里人さとひとこれを取きたゞにせんとをのを以て打かくるにたちまち眩暈めくるめき悶絶もんぜつ
これによつて其つなつけてをきかたなが
また二三日をもとの所へながれよる
里民りみん大に恐れて海濱かいひんをい注連しめひき不浄ふじやうはら
於是こゝにおひて遠近ゑんきん村里むらさとより大せいけいして曰 観音の霊木れいぼくはまあがらせ給ふとつぐるものあり これによて叅詣さんけいすとぞ
あるひは燈明とうみやうかゝ供物くもつをそなへて諸願しよぐはんeいのる 霊驗れいげん立所たちところにあり
日毎ひごと聞傳きゝつたへて群叅くんさんしければ此理智院りちゐんの本堂へうつし此木の片面へんめんほりて此を以て観音くはんをんざうつくり其彫抜ほりぬきあと厨子づしにしつらひこゝに安置し流木ながれきの観世音くはんぜをんと称ず