濵寺旧趾
髙師濵なる濵寺の旧跡は海邉にて紀路海道なり
此所古松多く繁りて風景斜めならす古詠多し
松の葉のあはひ〱に月千里 湘夕
北髙石村の海濱にあり
むかし元亨年中三光國師の開創し給ふ大雄寺の古跡なり
伽藍巍々として封境廣し
今濵寺と称する所南北廿四町東西八町許一面の真砂地にして古松多し
西に淡路嶋北に須广 赤石 一の谷 鉃枵峯南に紀の海 阿波の鳴門遥に見へて風景玲瓏として月を賞するの勝地なるへし
扶桒禅林僧宝傳ニ云
三光和尚諱は覺明又孤峯と号す奥州の人なり
後醍醐天皇帰依し給ひて戒法を受給ふ其時國師の号法衣を賜ふ
又勅して大雄寺を髙石にいとなみて開山と賞す