03-00300 信太杜

信太杜しのだのもり


信太杜しのだのもり
稲荷祠いなりのやしろ
 めう葛葉祠くずのはのやしろと称す
千枝楠ちゑのくすのき

 しくるゝやしのだのもりを庄屋がよめ 湘夕

信太郷中村の莊頭しやうや森田氏の宅地にあり信太社しのだのやしろより十町ばかり西也
いにしへは森の封境ほうきやう廣大くはうたいなりいま農家のうかたてならびてかの居地にはう廿間ばかりなる森ありて草木繁茂はんも尋常よのつね叢林さうりんなり
稲荷祠いなりのやしろありおく白狐祠ひやくこのやしろありりん中に狐穴こけつ多し

楠大樹くすのきのたいじゆ

林中にあり髙八丈許めぐり五丈みきふとさ五ひろ枝葉しよう四方へわかれて千あり
遠くのぞめば深林の如したぐひなき老楠らうなんにして根株こんちうこと〱く石の形也
抑此地は信太神たのしん初て鎭座し給ふ所とかや社傳旧記なく只此老楠らうなんのみありて信太森しのだのもりの名世に髙し

紀氏六帖
 いつみなるしのだの杜の楠の木の千枝にわかれて物をこそおもへ
清少納言枕草紙
 もりはしのだのもり
後拾遺
 夜だにあけは尋ねてきかんほとゝぎすしのだのもりのかたになく也 能因法師
千載
 おもふことちえにやしけきよふこ鳥しのだの杜のかたになく也  中納言匡房
新古今
 過にけり信太のもりのほとゝきすたえぬ雫を袖にのこして    藤原保季
續古今
 風さはくしのたのもりの夕たちに雨をのこしてはるゝむら雲   常盤井入道
詞花
くまもなく信太の杜の下晴て千枝の数さへみゆる月影       内大臣
續拾遺
 時雨とも何しかわかん神無月いつもしのたのもりの雫を     土御門内大臣
續千載
 下をれの音こそしけく聞えけれしのたのもりの千枝のしは雪   津守國助女

 ちえにさく花かとそみる白雪のつもるしのたの杜のこつえは   大藏卿重綱
新拾遺
 夕立のなこり久しき雫かなしのたの杜のちえの下露       伏見院
續後拾遺
 とにかくしけき思ひのたくひ哉しのたの森の秋のゆふつけ    經長女
新後拾遺
 千枝にこそかちらはすともほとゝきすしのたのもりの一聲もかな 慈鎭
拾遺
 道のへの日かけのつよくなるまゝにならすしのたのもりの下かけ 定家
新古
 日をへつゝ音こそまされいつもなるしのたの杜のちえの秋風   藤原經衡
堀川百首
 五月こはしのたの杜の時鳥木つたふちえの枝ことになけ     俊賴
建保名所
 ほとゝきすいまやみやこへいつみなるしのたのもりの明かたの聲 正三位知家

 ほとゝきすいまや都へいてつらんしのたの杜に聲を手向て    正三位行能
建保百首
 千枝にもる信太の杜の下露にあまる雫やほたるなるらん     僧正行意
和泉式部いづみしきぶ道貞みちさだにわすられてほどなく敦道あつみち親王しんわうかよひ給ふときゝてよみてつかはしける
新古今
 うつろはてしはししのたの杜を見よかへりもそする葛のうら風  赤染衛門

  かへし
 秋風はすこし吹とも葛のはのうらみかほには見へしとそおもふ  和泉式部


抱朴子曰きつね寿いのち八百歳をれはしばらくへんじてひととなると見へたり
信田しのたの狐も此類このたぐひならんか
 ごそつくをのぞは竹の皮ひろひ 細石

すべくずのうら風秋風のくずの葉はみなこひの哥にしてこゝろのみだれさはぐをくずの風にみだるゝにしてよむなるべし
慈鎭しちん和尚くはしやう我恋わがこひは松にしくれのそめかねて眞葛まくずかはらに風さはぐ也
これらも同じこゝろなるべし然るをいま信太杜しのだのもりの稲荷の社檀しやだんくず明神とて一まつ
簠簋鈔ほきのせう安倍あべの晴明せいめいが母は信太森しのだのもりの,ruby>狐きつね也とそ又玄中記げんちうき千歳せんざいきつね淫婦いんふとなる百歳ひやくさいきつね美女びぢよとなると見へたり
竒事きじこのむものこれらのによりて千歳せんざいきつねくずといふ美人びじんしたると云囃いゝはやししてこう世こゝにいはまつるなるべし
ろんずるにらずしかしながら泉州せんしう旅行りよかう景物けいぶつなるべし
俳諧に
 くずやむかしの森は庄屋か裏 浪花野坡
 神の灯か雨夜あまよに光るもり若葉わかば    籬嶌
 水遠し昼顔の咲狐原       湖夕
 冬かれや葛のうら葉に狐なく   昨烏
  雪の日しのたの森を通りて狂哥をよめる
 うつくしいくずごと雪女ゆきをんな朝日あさひ出れはきへ〱となる 斑竹

今に見る信太森神社


信太森神社
 

信太森神社 本殿
 

本殿前鳥居 扁額「葛之葉稲荷大神」

信太森葛葉稲荷神社ご由緒

 

由緒

 このお宮は正式には、信太森神社、通称、葛葉稲荷神社といいます。
 創建されたのが、和銅元年(708年)です。そしてこのお宮には、安倍保名と葛の葉姫の悲しい恋物語が言い伝えられています。
 おとぎ話や伝承の世界の主役にキツネがあります。
 あくまでもお使いでありますが、葛葉稲荷ではウカノミタマの大神やスサノオ命とともにキツネも神そのものです。
 昔、大阪阿倍野の里に安倍保名という若者がいました。家の再興を念じてこの信太の森の稲荷へ日参していました。ある日、お参りを終えて帰ろうとすると、一匹の白狐が走り寄って来ました。狩人に追いつめられて助けを求めてきました。保名は、草むらにキツネを隠し狩人達と争いになりました。傷を意識を失った保名が気が付くと、一人の美しい女性に介抱されていました。名は葛の葉といいました。数日後、保名の家へ葛の葉が訪ねてきて二人は心を通わせ夫婦となり、男の子が生まれました。
 しかし、幸せは長くは続きませんでした。この子が五つとなった秋、子供に添い寝していた葛の葉は眠っているうち、神通力を失ってキツネの正体を現せてしまいました。目覚めた子供はそれに気づく。もうこれまでと葛の葉は口にくわえた筆で歌を書き残して去りました。
その歌は、
  「恋しくは たづねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみくずの葉」
 夫と子供に宛てたものです母を慕って泣く子を背にした保名は、妻の名を呼びながら信太の森に来てみると、以前は見えなかった葛の葉っぱが社面一面に群がり茂っていました。そしてそれらの葛の葉が夫と我が子の声に応えるように葉をそよかせ泣くがごとく、葉のうらを見せてざわめいていました。
 その子は後、いろんな天皇に仕えられた、陰陽士”安倍晴明”です。

御祭神

 宇迦御魂神
 大己貴命
 大宮姫命
 素盞男命
 猿田彦命
 若宮葛ノ葉姫

【出典:信太森葛葉稲荷神社ホームページ

 

信太森葛葉稲荷神社

 
 信太森葛葉稲荷神社(しのだのもりくずのはいなりじんじゃ)は、大阪府和泉市葛の葉町にある神社。正式名称(登記上の宗教法人名称)は信太森神社(しのだのもりじんじゃ)であり、葛葉稲荷神社(くずのはいなりじんじゃ)などは通称である。旧社格は村社。
 日本七社(日本七稲荷)や関西三大稲荷の一つに数えられることがある。安倍晴明所縁の社。文学・歌舞伎などで知られる『葛の葉物語』の舞台となった場所で、清明の母・白狐が住んでいたと伝えられる。たくさんの末社があり、豊穣・商売繁盛の他、学徳成就・良縁祈願・安産祈願・子宝・夜泣き・交通安全に御利益がある。

由緒

 元来聖神社の末社とされる「若御前ノ宮」を中村の庄屋森田氏が屋敷神に取り込んだ社だったが、1740年頃に稲荷神を勧請して「信太森葛葉稲荷神社」とした。この社は森田氏が個人で所有する社で、神道系の吉田家、白川家等のどこにも属さず、土御門家の門下になる事も無かった。「葛葉」という名称が付いたのには、元禄歌舞伎の影響があずかっているとされる。
 「葛の葉子別れ」の話に言う白狐の古巣を擬しており、庄屋の森田氏が、「葛の葉子別れ」の話によって、自分の家の庭続きに創った文学遺跡ではなかったか、と片桐洋一は推測している。[8]

祭神

主祭神 – 宇迦御魂神、大己貴命、大宮姫命・素盞男命、猿田彦命、若宮葛ノ葉姫

境内

 ■本殿
  1898年(明治31年)再建。その後、老朽化のため基礎・床・屋根など新しくし、2008年(平成20年)3月に改修された。本殿内には、白狐石や御霊石(みたまいし)の他に、和泉式部の歌碑や松尾芭蕉の歌碑などもある。
    ・みたま石 – 本殿内に安置されている石。葛の葉が正体を知られ、安倍保名の元を去ってこの社にたどり着き、悲しみながらこの石になったとされる。
 ■拝殿
 ■楠大明神(千枝の楠)
  本殿左手にそびえる樹齢2,000年といわれている楠の大木。花山天皇が熊野行幸の際「千枝の楠(ちえのくす)」の称を賜っている。また、清少納言の草紙に「森は信太森」と記して以来、和歌の題となっている有名な楠である。根本から二つに分かれていることから『夫婦楠』と呼ばれており、夫婦円満・良縁成就などのご利益があるとされている。葛の葉はこの神木から現れたと伝えられている。
 ■楠本大明神
 ■狐の碑 – 御影石に「恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉 」の一文とキツネに戻った葛の葉の姿が彫られている。なお、当神社を氏神とする「葛の葉町」の神社横の地車庫のシャッターにもこの句が書かれている。
 ■春吉大神
 ■春永大神
 ■春高大神
 ■白姫大神・末光大神・不動長大神・吉光大神
 ■教信徒守護神諸霊
 ■竹内大明神
 ■白明大明神
 ■豊葦大神
 ■白永大神
 ■梅鶴大神・福玉大神
 ■荒熊大神・白長大神
 ■弘法大師
 ■不動明王
 ■黒竜権現・白姫竜神
 ■松平大神・千代一大神
 ■白光大神・八大龍王・葛葉大明神
 ■小玉大神
 ■阿部大神・楠宮大神
 ■千代丸大神・葛姫大神
 ■石切剣箭大神
 ■森吉大神
 ■慈母観音
 ■義隆大明神・静山大明神
 ■重高大神
 ■葛姫大神
 ■楠玉大神
 ■玉姫大神・猿佐光大神・宗高大神
 ■楠木龍王二柱大神
 ■春戸大明神
 ■水波女神
 ■厳島大神
 ■姿見の井戸
  保名に助けられた白狐が葛の葉に身を変えた際に、鏡に代えて姿を写して確認した井戸。葛の葉が無事にこちらの森に帰りついたことから、旅に発つ前にこの井戸に姿を写しておけば無事に帰って姿を写すことができるといわれている。
 ■子安石
  安倍晴明遥拝の石。子宝、安産を願う石。
 ■ふくろうの灯篭
  千利休作の灯篭。
 ■社務所
 ■滝行場
  本殿裏手に池と滝行場と呼ばれる石組みの行場がある。現在は滝が無く、小さい池がある状態。
 ■高春大神
 ■春高大明神
 ■豊丸大明神
 ■葛葉姫大神
 ■白瀧大明神
 ■白長大明神
 ■末広大神
 ■不動明王
 ■京春大明神・瀧壷大明神
 ■御初大明神
 ■白菊大神
 ■末永大明神
 ■吉廣大神
 ■格賀明神
 ■千代一大神
 ■千代丸大神
 ■葛葉大神・青木大神・猿彦大神
 ■葛姫大明神
 ■豊中大神
 ■貝徳大明神
 ■吉松大神
 ■菊松大神
 ■玉一大明神
 ■日吉大明神
 ■国高大明神
 ■光吉大明神
 ■梅雨鶴大神・福玉大神
 ■樋口大神
 ■国高大神・末光大神
 ■馮之木大明神

祭事

 ■初詣   お神酒ふるまい
 ■2月3日  節分祭ごま木奉納
 ■3月上旬 厄除けおかぐら奉納
 ■3月中旬 初午大祭
 ■10月の体育の日の前々日(宵宮)・前日(本宮)・体育の日(後宮)秋祭(だんじり祭り)
 ■12月初めの午の日 新穀感謝祭

土産物

 くずもち、交通安全のお守り、ツゲ製のキツネのストラップ、葛の葉伝説の本など。

交通

 JR西日本阪和線北信太駅 南西へ約250m。
 駅西口から参道が伸び、鳥居が4基建っている。

【出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』信太森葛葉稲荷神社


神木 千枝楠ちゑのくすのき
 

境内案内板
「和泉市指定天然記念物 葛の葉稲荷のクス」
 


狐の碑
 

姿見の井戸
 

白狐化身の木