03-05700 麻福田麿家地

麻福田麿まふくたまろの家地いへところ


麻福田丸まふくたまる戀路こひぢ
拾遺
恋つゝもけふは有なん玉くしけ
 あけんあしたをいかて暮さん

稲葉村にあり麻福田まふくた丸は智光ちくはう法師の童名とうめう也此時いまだ河内國なり
曼荼羅縁起まんたらえんき云むかし河内國に冨有ふゆうの家あり其門前に貧窮ひんきうの民あり其子を麻福田丸まふくたまるといふ
冨家ふけむすめこひわずらひけるに母これをさと知己ちかつきについてひそかとはしむ
童子其よしを語りければ母其及ばざる事をなげきて共にやまひ
冨家ふかひめほのかにこれを聞て母子ぼしわがために死せは大なるつみなるべし即ひそか使つかひつかはしていつは母子ぼしのこゝろをなぐさ
これによつて二人共ふたりとも快気くはいきしれば又姫使して云密事みつじふでみちよくなくんば通事つうじがたし
よろしくふでまなぶべしといひやれば童子これをふくしてふでよく
ひめ使つかひして云汝ねがはくは僧となり給へわれにちかつくに便たよりあらん童子すなはち僧となる
又姫使つかひして云たとひ僧となるとも効驗かうげんなくんばあゑて近づかじねがはく髙僧かうそうとなれ
小僧こぞうむ事を得ずして他國たこく
ひめこゝざしあはれんで手自てづからふじはかまぬふをく
小僧諸山にわたりてまなびける所早世そうせ
小僧悲嘆ひたんあま無常むじやう迅速じんそくなるをおそれて日夜にちやをこたらずつとめて學道がくだういたりければ智光ちくはう法師といふ
それより行基ぎやうぎ弟子でしと成ます〱佛門に深く世の聞へたかかりけるに行基より先立て入寂にうじやくせられき
行基すなはち智光ちくはう追善ついぜんしゆし一けいして一しゆ和哥わかゑいじ給ふ姫は行基の前身也とそ
麻福田修行藤袴其片裩遠波天喜