03-07000　岡山御堂旧蹟

久米田くめたの東新在家しんざいけ村にあり文亀ふんき二年の頃山直郷やまたへのかうに祐善ゆうぜん願了ぐはんりやうといふ二僧あり
親鸞聖人の御教法に帰入し本願寺第九代實如じつによ上人當國御下向の時此地に旅舘りよくはんを建て化益けやくし給ふとき随身ずいしんしけり
其外道俗叅集さんしうして法門に入る者もの稲麻たうまの如し其時そのときの古跡こせきを今御成墳おなりつかといふ
こゝに岡山の地は風景ふうけい勝すぐれたれば叅詣さんけいの便たよりも可かならんとて七間けん四面めんの御堂みだう庫裏くり書院しよゐん鐘樓しゆらうまて建営こんゑいしたまふ
永正二年の夏再び御下向あつて聖德太子眞しん作の阿弥陀佛を本尊とい祖師親鸞聖人の影ゑいは自画じぐはして安置せられき
然るに畠山はたけやま紀伊守髙政三好筑前守義賢と對陣三好方利なくして此岡山に籠こもる
畠山はたけやま追かけ來り焼討やきうちにせんとて火を放ちければ其時御堂みだう灰燼くはいじんとぞなりにける
其後元もとの如く再建さいこん成就しける所第十一代顕如上人大坂石山に籠城し給ふ砌みぎり
頃は天正八年八月山直郷たへのかう士寺田又右衛門松浦安太夫といふもの信長の旗下きかに属しよくして日蓮の宗徒しうとをかたらひ焼討にしけり
これより岡山をかやまの御堂みだう廢地はいちと成礎石そせきのみ遺りて鐘は今岸和田城内にありとかや
本尊祖影とも近邑きんゆう八箇村へ預り毎歳報恩講を修行すこれを岡山講といふ